ID-350 石油製品の分子量 |
潤滑油は種々の炭化水素の混合物といわれていますが、分子量はどの程度のものでしょうか。分子量の測定方法とあわせて説明することとします。 石油製品は種々の炭化水素その他の混合物ですから、真の分子量は測定できないわけですが、混合物としての平均分子量は、大体表1の通りとされています。 |
品 名 | 炭素数 | 分子量 | 平均分子量 |
---|---|---|---|
ガソリン | C5〜C12 | 72〜170 | 100 |
灯 油 | C12〜C18 | 170〜254 | 212 |
軽 油 | C16〜C20 | 226〜282 | 250 |
潤 滑 油 | C20〜C70 | 250〜1,000 | 600 |
タービン油32 | 408 | ||
タービン油46 | 535 | ||
30モーター油 | 520 | ||
40モーター油 | 560 |
石油製品および有機化合物の分子量の測定方法としては、(1)氷点降下法、(2)蒸気圧平衡法、(3)他の物理恒数───たとえば平均沸点、粘度───から間接的に概算する方法などがあります。このうち、分子量の大きい潤滑油などにおいては通常、氷点降下法または蒸気圧平衡法による測定を行います。 以下この二つの測定方法の概要について説明いたします。 (1)蒸気圧平衡法 これは、いわゆるラウールの第一法則(注1)であらわされる“溶液の濃度と蒸気圧降下の関係”を利用して分子量を求める方法です。 つまり、溶剤の飽和蒸気中に、同じ温度の溶媒と溶液の二つの液滴がおかれると、それぞれの蒸気圧が異なるため、溶媒が溶液側に凝縮します。この凝縮によって起こる溶液の温度上昇を測定し、ラウールの法則にしたがって予め作成した検量線から分子量を算出するものです。 (2)氷点降下法 この方法も、いわゆるラウールの法則を利用するものですが、この場合は溶液の濃度と氷点(凝固点)降下の関係から求めるものです。 つまり、試料(油)を適当な溶剤に溶解した場合、その凝固点が純溶媒のそれより低下しますので、その低下度合いから分子量を計算します。 試験法としては、図1に示すような装置を用い、以下に述べる操作にしたがって測定を行います。 図1 氷点降下測定装置 まず、冷却浴中に寒剤を入れ、内管に溶剤(ベンゼンまたはシクロヘキサン)を正確に採り、それに脱水剤を加えます。次に、これを十字管から乾燥空気を送入してかきまぜを行います。そしてこの溶剤が氷点に近づいたならば、1分毎に温度を読みとり、図2のように曲線OBCDのような時間ー温度曲線を作ります。 図2 氷点付近の時間−温度曲線 ここで、この溶剤の真の氷点は、この曲線中CDをOBの方へ延長(破線部)したA点に与えられます。 (ABは過冷却を示しています。図2ではやや極端に描かれていますが、純粋な乾燥溶剤の場合は、このAB部は小さい。) このようにして、溶剤の氷点を正確に測定したならば、さらに試料油を正確に秤量採取し、同様の操作を繰り返して、溶液の氷点を求めます。そしてその氷点差から分子量を計算します。(注2) |
(注1) | ラウールの法則(Raoult's)は、“稀薄溶液におけるその溶液の蒸気圧や氷点の降下率はその濃度に比例する”というもので、蒸気圧降下率と濃度の関係を述べたものを第一法則と呼び、氷点降下と濃度の関係を述べたものを第二法則とよんで区別している。 |
(注2) | 氷点の差△tと溶質の分子量Mとの間には、次の関係があるので△tを測定すれば分子量を求めることができる。
(aは溶媒1,000g中の溶質のグラム数、△tmは溶媒1,000g中に溶質1モルを含む溶液の氷点降下の量。) |