ID-L228 水と油はどのようにすれば混ざり合うか
 
 潤滑油の中には水と油が混ざり合ったものがあります。油の中に水が溶け込んでいるものもありますし、水溶性金属加工油剤のように油を水に乳化して使用するものもあります。水と油は通常では混ざりませんので、混ぜるためには何らかの手段が必要になります。
 
(1)水と油はなぜ混ざらないのか
 
 水分子は図1の構造をしています。分子全体では電気的に中性ですが、酸素原子と水素原子の共有結合は酸素原子側に電子雲が偏っており、水素原子はややプラス、酸素原子はややマイナスに帯電して分子内に極性があります(アンモニアNHのN−Hも同様な極性があります)。
 
 水がものを溶かすときには、水分子の極性にもとづく静電的な作用が大きな働きをします。水によく溶けるものは無機塩のように水中で電荷のあるイオンになるものとか、有機物であればOHやNHのような極性のある部分(極性基)が分子に多く含まれるもの───例えば砂糖など───であります。
 
 有機物で分子内に極性がないものは静電的作用が働かないので水には溶けません。油が水に溶けないのはこのためです(油の分子の大半をしめるC−H結合は極性がありません)。水に油を加えると水は水同士、油は油同士に分かれてしまいます。

 
図1 水分子の構造
 
 
(2)水と油を混ぜる方法
 
 水に油を溶かすことは、分子の構造から考えて不可能です。水に油を加えただけでは、強力にかき混ぜてもすぐに水層と油層に分離してしまいます。
 
 しかし、界面活性剤を用いることによって細かい油滴(微粒子)を水中に安定に混ぜる(分散させる)ことが可能になります。同様にして油に水の微粒子を分散させることも可能です。これを乳化といいます。
 
 界面活性剤の分子は図2のように水と親和性がある極性基(親水基)と、油と親和性がある親油基の両方があります。
 
 水中に油が乳化している状態は、図3のように油の微粒子の表面を───界面活性剤が親油基と油の微粒子が接触するかたちで───覆っている状態を想像してもらうとわかりやすいです。
 
 このとき、油の微粒子の表面には界面活性剤の親水基で覆われていますので微粒子全体では水に溶けます。
 
 また微粒子同士では反発する力が働いており、微粒子が集まることはありません。

 
図2 界面活性剤の分子構造
(1例)

 
 

 
図3 油滴が水に乳化した状態
 
 このように界面活性剤をなかだちにすることで、油滴を水中に、あるいは水滴を油中に分散させるかたちで水と油を混ぜることができます。
 
 

 
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