ID-084 銅および銅合金の腐食と防食について

 
1.銅と銅合金の用途
 
 銅は腐食しにくいので古代から人類が広く使用してきた金属です。銅は電気や熱を伝えやすいのでその方面の用途に広く使われるが、軟らかいため構造用材料としての用途は少ないです。
 しかし、これに亜鉛を添加した黄銅、すずを添加した青銅、ニッケルを添加した白銅などは、鉄に比べて 耐食性がよく強度も相当にあるので工業上重要な金属となっています。
 例えば、耐食性と熱伝導性が良いため、冷却水を扱う分野で復水器の伝熱管材料として黄銅系合金や白銅系合金が広く使われています。
 
 
2.銅の腐食性
 
 銅は他の有用金属、例えば、鉄やアルミニウムや亜鉛などと比べてはるかに安定な金属であり、種々の環境下でも腐食を起こしにくいものです。これは表面に酸化膜などを形成して、不動態化するためです。
 したがって、銅の耐食性は実用材料中では最良の部類に入ります。
 しかし、銅の耐食性を十分に利用するには次のような環境を避ける必要があります。内容が専門的になりますので、詳細は専門書を参考にして下さい。
  (1)酸化性酸および酸化剤を含む非酸化性酸
  (2)強いアルカリおよび錯イオンをつくるアルカリ
  (3)強い酸化剤または酸化性塩を含む環境
  (4)硫化物がある場合
  (5)溶存酸素のある高速流水
 
 
3.銅の防食(変色防止)
 
 銅および銅合金は、大気中で露あるいは大気汚染などで変色します。これは、表面に酸化物の皮膜が形成するためで、酸化皮膜の厚さにより銅表面の変色は種々異なります。
 この変色は腐食というほどではないのですが、銅がその美しい外観のために装飾用に使われることを前提にすると、商品として大きな問題となります。
 このため、銅の腐食抑制剤としては古くから、チアゾール系,イミダゾール系およびクロム酸系が使用されてきましたが、近年はベンゾトリアゾールが銅に有効な有機インヒビターとして広く使われています。
 ベンゾトリアゾールの構造式を図1に示します。ベンゾトリアゾールは銅と結合してその表面を保護するもので、気化性防錆剤として防錆紙に使用されるとともに、金属加工時の変色防止のために各種加工用油剤(潤滑油、切削油など)に、美観維持のために塗料などに添加されます。

図1 ベンゾトリアゾールの構造式
 
 

 
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