ID-341 水溶性洗浄剤の防腐性能について |
1.耐腐敗性の評価方法 バクテリアに対する耐腐敗性を殺菌指数で表示します。 1−1.方法 |
(1) | 洗浄剤原液を20倍に希釈し、この希釈液を試験管(φ17×180mm)にそれぞれ1,2,3,4,5,6,7,8,9ml採取します。 |
(2) | これに生菌数5×107〜1×108個/mlの腐敗液を添加して全量を10mlとします。 |
(3) | この混合液を30℃恒温槽に24時間静置します。 |
(4) | この液を0.1ml採取し、寒天倍地面に均一塗布し、37℃恒温槽に48時間静置し培養します。菌の生育が認められたものを(+)生育のないものを(−)とします。 |
1−2.表示 菌の生育が認められなかった混合液サンプルは腐敗液に含まれる菌が全て殺菌されたとみなすことができます。従って(−)で表示される混合液で最も腐敗液量の多いサンプルの混合液を用い次の式で殺菌指数を算出します。 |
殺菌指数=20×腐敗液(ml)/洗浄剤希釈液(ml)=腐敗液(ml)/洗浄剤原液(ml) |
※20は希釈倍率 |
すなわち、殺菌指数は、洗浄剤原液により、どれだけの量の腐敗液を30℃24時間で殺菌することが出来るかの指標であり、大きいほど抗菌性は大きいといえます。腐敗した使用液を補給形式で殺菌するには殺菌指数20の洗浄剤であれば、洗浄剤原液を使用液の1/20量以上補給すれば良いということになります。 2.洗浄剤の防腐対策 2−1.洗浄剤組成と耐腐敗性の関係 |
(1)リン酸塩 | バクテリアの栄養源となるため耐腐敗性は劣る。 |
(2)ホウ酸塩 | カビに有効と云われているが、地方条例で規制があるので注意を要す。 |
(3)脂肪酸 | 天然脂肪酸は合成脂肪酸に比べ耐腐敗性は劣る。 |
(4)アミン | 耐腐敗性に優れる。一般に、一級アミンが最も耐腐敗性にすぐれており,ついで,ニ級アミン、三級アミンの順となる。皮膚への影響もこの順で大きいので注意を要する。 |
(5)界面活性剤 | カチオン活性剤は良好な耐腐敗性を示すが、アルカリ領域では溶解性に劣るため使用しにくい。アニオン活性剤の中では天然の脂肪酸を原料とした石けん類は腐敗しやすい。一方、アルキルベンゼンスルホン酸Naのように合成原料を使用したものは腐敗しにくい。ノニオン活性剤もアニオン活性剤と同様、天然の脂肪酸、脂肪族アルコールを原料としたものは腐敗しやすい。一方、アルキルフェノールのEO付加物のように合成原料を使用したものは腐敗しにくい。ただし、合成原料を使用したものは生分解性が劣るので、環境への影響を配慮する必要がある。 |
(6)防腐剤 | 微量添加で耐腐敗性は向上するが、皮膚への影響があるので注意を要す。 |
2−2.洗浄剤のPHと耐腐敗性の関係 PHが高いほど、耐腐敗性は良好であるが、皮膚への影響が大きいので注意を要します。 2−3.洗浄条件と耐腐敗性の関係 洗浄温度が60℃以上あれば菌が死滅するので、腐敗しにくい。また温度が高いほど洗浄は良好となります。そこで、60〜80℃で洗浄するのが好ましいといえます。このように、洗浄条件の変更で対処すれば、環境、皮膚への悪影響のない洗浄剤でも使用可能となります。 2−4.腐敗による性能面、環境への影響 |
(1)さび止め性の低下 | 腐敗が進行すると、蟻酸、酢酸などの低級酸の生成により、PHが低下し、さび止め性が低下します。PHが9以下になると、腐敗が加速度的に進行するので、更液するか、PH調整剤、防腐剤の添加を行なう必要があります。 |
(2)洗浄性の低下 | 有効成分が分解し、洗浄性が低下する恐れがあるので、注意が必要です。 |
(3)臭気が激しくなる | 作業環境を低下するので、好ましくありません。 |
上記結果より、洗浄剤の耐腐敗性は、 1)腐敗しにくい原料を用いる 2)PHを10以上に上げる 3)ホウ酸、アミン、防腐剤などを適当に組み合わせる 等により対処しているのが実情です。 |