ID-342 不水溶性切削油剤におけるZnDTPの効果
 
 ZnDTP(Zinc Dialkyldithiophosphate)は、摩耗防止能、焼付防止能、酸化防止能などを併せ持つ多機能添加剤として知られており、その化学構造は(1)式に示すものです。ZnDTPは特に、エンジン油や作動油をはじめとした工業用潤滑油に広く使用されており、金属加工油においては焼付防止を目的に塑性加工用油剤(冷間プレス、鍛造等に適用される油剤)に使用されています。しかし、新生面の露出が大きく、高温になる切削加工においてはZnDTPの効果は明確にされておらず切削油剤への適用は少ないのが現状です。
 

 
 ZnDTPの潤滑機構には、定説と言われるものがなく、その分子構造から
 
  (1)硫黄被膜説
  (2)りん被膜説
  (3)ポリマー被膜説
 
 等が提案されています。
 
 ZnDTPは一般に、アルキル基、アリール基の炭素数により熱化学的安定性が変化し、異なる性能を示すことが知られており、潤滑状態を考慮しより効果的に働く構造のものが使用されています。
 
 潤滑性についてはチムケン試験により評価された例がありますが、そのOK荷重から炭化水素基の違いによる性能は  (優)二級アルキル>一級アルキル>アリール(劣)  であると言われています。これは熱分解のしやすさと一致し、反応性の高いものほど優れるということになります。
 

 
 一方、切削油剤においては前記したように、まだZnDTPの使用量は少ないですが、環境上の問題から塩素系極圧添加剤を使用しない塩素フリー油剤の検討が行われており、これまで性能、価格の面から多用されてきた塩素系極圧添加剤に替わる潤滑添加剤の一つとして注目されるようになってきています。
 図1に、切削加工においてZnDTPの効果を評価した例(切削抵抗)を示しました。
 この結果から、塩素系極圧添加剤ほどの切削性能は望めないが、切削加工においても有効な添加剤であることが判ります。
 これらのことから、ZnDTPは塩素フリー油剤の開発にあたって、将来的にも有望な潤滑添加剤の一つとして期待されています。
 

 
図1 ZnDTPの切削性能

条件: サーフェスブローチ加工 被削材 SCr420H 切削速度 4m/min
切込み0.08mm/刃  添加剤濃度 40%
 
 

 
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