ID-142 ポリブデンの用途
 
 ポリブデンは図1に示すようなイソブチレンを主体とし、一部にノルマルーブデンが反応した共重合体からなる長鎖の合成系炭化水素化合物で、その歴史は古く1940年には米国で商品化されています。
 ポリブデンは合成反応での条件によって幅広い粘度の製品が製造可能(40℃において約20〜200,0002/s)で透明な粘稠稠着性のある液体ポリマーです。多くの油脂、有機溶剤類と相溶性が良く、化学安定性、電気絶縁特性にも優れています。
 古くは、粘度指数向上剤や流動点降下剤として使用されていたようですが、現在は熱分解性が良く、残留炭素分がほとんど残らないという特性を利用して、
 
 (1)スモークレス型2サイクルオイル潤滑油基材
 (2)無灰型分散剤などの添加剤用原料
 (3)圧延油・焼入れ油の基材
 (4)コンプレッサーオイル
 
 等に使用されています。

 
図1 ポリブデンの構造式

 
図2 ポリブデンの用途
 
 なお、潤滑油剤以外にも接着剤やコーキング剤原料、ラップフィルムなどの樹脂改質剤、可塑剤、インキや塗料の原料などにも使用されています。(図2参照)
 潤滑油の中で、最もよく使用されているスモークレス2サイクル油基材としてのポリブデンの特性について簡単に述べますと、
 一般の鉱物油系2サイクル油と比較して、排気煙が極めて薄くできます。
 2サイクルエンジンの場合、「煙」は排気ガスに混在した未燃焼油とカーボンの微粒子ですが、微粒子中には未燃焼油が約90%程度も占めていると言われています。未燃焼油を低減すれば目に見える煙はかなり低減させることができます。
 2サイクルエンジン油に熱分解しやすく、かつ媒などの残査を残さないポリブデンを使用することによって、煙を大幅に低減できます。図3および図4は鉱油との煙の発生量の比較試験結果です。燃焼室内において燃焼性が良いため、ピストンの清浄性が保たれ、排気系の閉塞も少なくすることができます。
 ただし、エンジンの出力や用途にあった粘度(分子量の大きさで決まる)のポリブデンを選択しなければ、逆にその粘着性からエンジンの起動悪化やリング固着といったトラブルを起こすこともあります。2サイクルエンジン油の購入にはメーカー指定あるいはその機種に適合したオイルを選択する注意が必要です。
 

 
図3 スモークに及ぼす基油組成の影響

 
図4 ポリブデン含有量とスモークの関係
 
 このように、大気中に放出される未燃焼微粒子を抑え、低公害型の2サイクルエンジン油としてポリブデンは大変有効ではありますが、一方生分解性に乏しくモーターボートなどの船外機での使用には問題が残ります。(船外機用には生分解性に優れたエステル系基油が多く使用されています。)
「参考文献」
  1993年7月 潤滑経済
 
 

 
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