ID-334 エンジン油添加剤について
エンジン油に要求される性能には、清浄分散剤、摩耗防止剤、摩擦特性、酸化安定性、酸中和性、錆止め性、消泡性、粘度温度特性、低温流動性等があります。これら性能を付与するためにエンジン油には、各種添加剤がバランスよく配合されています。 | ![]() |
表1 エンジン油添加剤の種類とその性能1)
添加剤の種類 | 代表的化合物 | 主な機能 |
---|---|---|
清浄分散剤 | フェネート、スルホネート、サリシレート、ポリブテニルコハク酸エステル、ベンジルアミン、分散型粘度指数向上剤 | スラッジやカ−ボンを油中に分散し金属面を清浄に保つ、スラッジ・デポジットの前駆体を可溶化して成長を抑制、酸性物質を中和 |
酸化防止剤 | ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ヒンダードフェノール、硫化オレフィン、アルキル芳香族アミン、ベンゾトリアゾール、チアゾアゾール | 油の酸化防止 腐食性物質の生成抑制 金属イオンの酸化触媒作用防止 |
極圧剤 摩耗防止剤 |
ジチオリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ホスフェート、アルキルサルファイド、ホウ酸カリウム分散体 | 金属表面に皮膜を作り接触面の摩耗、焼き付きを防止 |
摩擦調整剤 | 長鎖脂肪族エステル、アミン、有機モリブデン化合物、ホウ素化合物 | 金属表面に保護膜を作り摩耗を低減 |
防錆剤 | スルホネート、カルボン酸、エステル | 金属表面に吸着膜を作りさびの発生を抑制 |
粘度指数向上剤 | ポリメタクリレート、オレフィン共重合体 | 温度変化に伴う油の粘度変化を小さくし、粘度指数を改善 |
流動点降下剤 | ポリメタクリレート | 油中のワックスと共晶を作り流動点を下げる |
消泡剤 | ジメチルポリシロキサン、ポリアクリレート | 表面張力変化等により、破泡、抑泡する |
1) | 清浄分散剤 | |
清浄分散剤は、潤滑油の酸化劣化物や燃料の不完全燃焼物により生成するスラッジやラッカー、カ−ボンを油中に分散し、エンジン各部への堆積を防止する役割を果たします。 また、燃料に含まれる硫黄酸化物等の燃焼によって生じる有機酸を中和し、スラッジの生成や腐食摩耗を防止する働きもします。清浄分散剤は機能面から金属を含む金属型清浄剤と金属を含まない無灰型分散剤とに区分されているのが一般的です。エンジン油に使用されている金属型清浄剤は、スルフォネート、フィネート、サリシレート等で、無灰型分散剤は、主としてコハク酸イミドタイプが使用されています。 | ||
2) | 摩耗防止剤 | |
摩耗防止剤は、エンジン摺動部に保護膜を形成し摩耗や焼き付きを防止する役割を果たす添加剤で、エンジン油にはジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が主として用いられています。 | ||
3) | 酸化防止剤 | |
酸化防止剤は、エンジン油の酸化劣化を抑制し、酸価増加や粘度上昇、スラッジの発生を防止する役割を持っています。エンジン油には主としてZnDTPが用いられていますが、フェノール系やアミン系酸化防止剤等が併用される場合もあります。 | ||
4) | 粘度指数向上剤 | |
粘度指数向上剤は、マルチグレードエンジン油の粘度温度特性(粘度指数の向上)を付与するために添加されています。エンジン油に使用される粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィンコポリマー(OCP)等で、PMAは流動点降下作用も兼ね備えたものもあります。また、ポリマー中に極性基を導入した分散能を有する分散型粘度指数向上剤も使用されています。 | ||
5) | 流動点降下剤 | |
流動点降下剤は、低温時に生じるワックスを抑制しエンジン油の低温流動性を失わないために添加されています。エンジン油にはポリメタクリレートが主として用いられています。 | ||
6) | 摩擦調整剤 | |
摩擦調整剤は、摺動部の摩擦を低減する役割を持つ添加剤であり、最近の省燃費エンジン油には不可欠なものになっています。エンジン油に使用されている摩擦調整剤には、窒素系、エステル系、有機モリブデン系等があります。 | ||
エンジン油の要求性能は、これまで以上に過酷になってくることから、添加剤配合技術がますます重要になってくるものと思われます。 |
参考文献; | 1) | シーエムシー編集部:石油製品添加剤の開発と最新技術、 株式会社シーエムシー編 | |