ID-164 グリースの蒸発量試験について | |
グリースが高温の雰囲気にさらされた時に蒸発損失する量を蒸発量といいます。グリースの蒸発量は主として基油の蒸発損失に起因するもので、基油の種類、動粘度などが影響を及ぼします。高温下の使用において蒸発損失が多いとグリースの硬化、潤滑不良を経て早期の潤滑寿命に至る原因ともなりますので、グリースの耐熱性評価の一つとなっています。 グリースの蒸発量試験方法は、JISK2220.5.6に規定されています。規定の試料容器に試料をとり、規定温度の空気を試料表面に22h通じ、試料の減量から蒸発量を算出します。以下にJIS蒸発量試験の概要を述べます。 |
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試験器は蒸発器、試料容器、空気供給装置、恒温浴、流量計から構成されています。 図1に示す試料容器に試料を詰め、表面を平らにします。覆いをねじ込み、ひょう量します。 図2に示す蒸発器を入れた恒温槽を試験温度(99℃)に調節し、排出管に試料容器及び覆いを取り付けて蒸発器に2.58g/min(標準状態で2l/min)の空気を22h送ります。 22h後、取り出した試料容器を放冷し、ひょう量します。蒸発量は次式により算出します。 ![]() ここに、WL:蒸発量(質量%) WS:試験前の試料の質量(g) W :試験後の試料の質量(g) |
![]() 図1 試料容器及び覆い(一例)1) |
JISK2220の転がり軸受用グリース1〜3種には、次の規定があります。低温用のグリースは低粘度基油を使用しますので、蒸発量の規定は広くなっています(表1)。 |
1種 (汎用) |
2種 (低温用) |
3種 (広温度範囲用) |
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蒸発量(99℃、22h)質量% | 2.0以下 | 10.0以下 | 1.5以下 |
(130℃、22h)質量% | − | − | 5.0以下 |
JISと同じ蒸発量試験が、ASTMD972に規定されています。また、316℃までの高温で試験可能な蒸発量試験が、ASTMD2595に規定されています。 |
[引用文献] |
1) JISK2220グリース |