ID-206 水溶性切削油剤の防錆試験について

 切削油剤のさび止め性能は被削材、機械等をさびから守る上で重要な性能であり、特に水をベースとした水溶性油剤(水切)では不水に比較してさびが発生し易い条件となります。
 さびは、酸化鉄、水酸化鉄の混合体で疎な酸化鉄膜が生成した場合、水和してさびになりやすく、特に切削面は新生面で反応性が高く、さびが発生しやすいと考えられております。
 水切のさび止め性はこれらの金属表面に有機物皮膜を形成し、内部を保護することによって発揮されます。この保護膜を形成する物質が有機インヒビターや鉱物油などです。
 水切で加工される材料では、最もさびトラブルとなりやすい材料が鋳鉄材です。したがって油剤の防錆性能を評価するには、鋳鉄材を使用するのが一般的であり、以下に紹介する鋳鉄切屑浸漬法は最も簡便で再現性の良い評価方法です。

 
 
【鋳鉄切屑浸漬法(FC25 切屑法)】
 
 この方法は鋳鉄切屑を用いさび発生の状態により油剤のさび止め性を評価する方法ですが、目的により適宜必要とする金属切屑を用いることも可能です。その際、同一条件で作製したものを用いることが良い再現性を得るために必要です。
 試験方法は図1に示すように、ドライカットした一定メッシュの鋳物切屑を溶剤で洗浄した後、ガラスシャーレにとり切屑が完全に浸漬するまで試料を注ぎます。試料液が切屑に湿潤した後、シャーレを傾けて試料液をきり、シャーレに軽くふたをして室内に放置してさびの発生状況を経時毎に観察し、発錆面積の大小によって評価します。
 
 
図1 鋳鉄切屑浸漬法
 

 
 
 この方法の変形には、シャーレの中にろ紙を敷いて切屑をろ紙上におく方法や、切屑を研摩した鋳鉄板または軟鋼板上におく方法があります。

具体的な試験方法を以下に示します。

1.器具および試験片
(1) シャーレ
洗浄、乾燥した直径5〜6cm、深さ2〜5cmの蓋付きシャーレ
 
(2) 試験片
ドライカット(乾切削)した鋳物切屑(FC25:8〜12mesh)
 
2.操作
 シャーレに鋳物切屑を約15gとり、試料液を約5〜10ml入れ、5分間静置して試料液を切屑に湿潤させます。5分後シャーレを傾斜して浸漬液をよくきり、蓋をして室内に静置します。経時毎にシャーレの蓋をとり、上下両面からさびの発生量を観察します
 
3.報告
 試料は同一試料2点づつ行い、類似の結果を得た場合は下記表示法に基づき、観察経過時間と合わせて報告します。
 
発生区分および表示方法
◎  ;   さび無
○  ;   1〜10点さび発生
△  ;   10〜数十点さび発生
×  ;   数十点〜全面積の1/2以下さび発生
××  ;   全面積の1/2以上さび発生
 
4.備考
 試料の希釈倍率は使用濃度に合わせてその都度決定します。観察時間の報告は、1,2,3,6,12,24時間とし、必要に応じてさらに観察時間を延長します。

観察時の室温ならびに発生したさびが黒さび白さびのときは注記します。

 
 

 
Copyright 1999-2003 Japan Lubricating Oil Society. All Rights Reserved.