ID-S81 非塩素系切削油について
 
 
 今日使用されている切削油剤には、塩素系添加剤が広く使用されてきた。これは塩素系添加剤が各種の切削条件で優れた効果を示すためである。塩素系添加剤のほかに、油脂系、りん系、硫黄系などの添加剤があるが、広い使用条件で切削抵抗を下げる効果は図1のモデル図に示すように塩素系添加剤にはかなわない。
 

 
図1 切削油添加剤の効果の概念図
 
 
 しかしながら、塩素系添加剤の一つである塩素化パラフィンには発ガン性があるとの報告がなされたこと、焼却処理時に有害なダイオキシンを生成する可能性が指摘されたこと、さらには使用時にダイオキシンが生成している可能性が示されたことなどから、近年塩素系添加剤を含まない非塩素系切削剤への転換が進められている。
 
 非塩素系切削剤としては、各種の検討の結果、硫黄系添加剤とCaスルホネートを併用した切削剤が開発されている3)4)。硫黄系添加剤のみでは塩素系添加剤より切削性能が劣るが、図2に示すようにCaスルホネートを併用することにより塩素系添加剤と同等以上の性能に改善することができる。切削面の硫黄の分布を観察した結果から、硫黄系添加剤とCaスルホネートの併用処方では強固な硫化膜が生成していることが明らかになり、Caスルホネートが皮膜の生成に大きな役割を果たしていることが分かっている。
 

 
図2 ボールねじ研削における塩素フリー油の切削性能

「出典」
特集 トライポロジーでビジネスチャンスを! 月刊トライボロジ1999-2003.1 P23
 
 

 
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