現在、市場で販売されている鉱物油系の潤滑油には、
1)パラフィン系ベースオイル: |
中東アジアを主体とする原油から精製されるベースオイル
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2)ナフテン系ベースオイル : |
ベネズエラ、アメリカ、ロシア、オーストラリアなどの一部の油田から産出される原油から精製されるベースオイル。日本には現在は主としてオーストラリア(ワンドゥー原油)から輸入されています。
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の2種類があります。販売数量的には圧倒的にパラフィン系ベースオイルが多いのですが、ナフテン系においてもその独特の特性から、現在でも数多くの潤滑油製品に使用されています。パラフィン系基油とナフテン系基油の組成構造の相違を図1に示します。
〈パラフィン基油〉
〈ナフテン基油〉
図1 パラフィン基油とナフテン基油の組成
つぎに、それぞれの基油の特性を対照的にみた場合の相違を表1に示します。
表1 パラフィン系基油とナフテン系基油の相違
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パラフィン系基油 |
ナフテン系基油 |
原油の供給性 |
豊富 |
主に中東 |
少ない |
米国・ベネズエラ等 |
原油からの得率 |
高い |
− |
低い |
− |
密度 |
小さい |
0.86 |
大きい |
0.90 |
粘度指数 |
高い |
90〜110 |
低い |
0〜70 |
引火点 |
高い |
(VG68:約230) |
低い |
(VG68:約192) |
流動点 |
高い |
−10〜−25 |
低い |
−30〜−50 |
溶解性 |
低い |
− |
高い |
− |
アニリン点 |
高い |
80〜110 |
低い |
60〜90 |
屈折率 |
低い |
− |
高い |
− |
熱安定性 |
やや良 |
− |
良い |
− |
炭化傾向 |
硬 質 |
− |
軟質 |
− |
カーボンタイプ(環分析) |
Cp;60〜75
Cn;20〜40
Ca; 3〜10 |
Cp;30〜50
Cn;40〜60
Ca; 8〜16 |
上表のそれぞれの特徴を潤滑油製品に反映させた場合の一覧表を表2に示します。
表2 パラフィン系基油とナフテン系基油による製品の特長
パラフィン系
基油の長所 |
1.VIが高い
| 車両用、工業設備油など全般に優秀な 製品が得られる。
特にエンジン油はVI、 引火点が高い必要あり。 |
2.引火点が高い |
ナフテン系
基油の長所 |
1.流動点が低い |
冷凍機油(代替フロン以外)・電気絶縁油 |
2.アニリン点が低い
(溶解性が高い) |
金属加工油・インキ基油・粘着剤基剤
ゴム配合油伸展油・グリース基剤等 |
3.軟質炭化物の生成 |
高温用レシプロ型空気圧縮機油 |
ナフテン系基油にはパラフィン系基油にない良い特性を示す部分がありますが、世界的に同原油は枯渇してきており、かつ高級潤滑油にできる良質の原油はさらに少量であると言われています。このため、多くのナフテン系の潤滑油が近年の高度な精製技術と添加剤の開発により、パラフィン系基油でも同等以上の性能が発揮できるようになり、取って変わってきています。しかし、いくつかの基剤として用いられているナフテン系基油はまだ多く使用されています。
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