ID-319 石油製品の発火点及び引火点との関係について
 
発火点や引火点及び燃焼点はそれぞれ物質の燃焼特性を示す数値ですが、一般的にはよく混同されて考えられているようです。また、発火点については普通の管理・取引上等で試験されることはなく、特殊な目的のために要求される事もありますが、実測される事は滅多になく、大抵は文献値が利用されているようです。
 
 
(1) 発火点
 
発火点(Ignition Temperature)とは、着火源を与えないで物質を空気中又は酸素中で加熱する事によって発火又は爆発を起こす最低温度をいいます。物質が液体やガスの場合は発火温度又は点火温度と称する事が多く、固体の場合は主として着火温度を用いるようです。また自然発火温度(Spontaneous Ignition Temperature)と呼ぶこともあります。
 
発火点の測定法法は物質の状態によって異なり、又その測定値は加熱する容器の大きさ、形、材質、表面状態、加熱温度等に影響されますので、その物質特有の常数ではありません。文献によって値が違っているのもこのためです。主として燃料の化学構造に関係すると言われています。
 
 
(2) 引火点、燃焼点
 
引火点(Flash Point)とは、一定条件下で試料を加熱したときに、発生する試料の蒸気が試料表面上の空気と混合して可燃混合気体をつくるのにちょうど十分となり、これに火炎を近づけると光を発して瞬間的に燃焼する際の試料の温度をいいます。
 
この引火点温度を超えてさらに加熱を続けると、火炎を近づけたときに連続して燃焼する温度に達しますが、これを燃焼点(Fire Point)と呼んでいます。一般に燃焼点は引火点よりも20〜60℃位高い値を示す様です。
 
表1 石油製品の引火点と発火点
  引火点(℃) 発火点(℃)
ガソリン
灯油
軽油
重油
潤滑油
<20
50
80
80〜100
120〜350
510〜550
400〜500
300〜350
300〜450
250〜350
 
発火点は、よく引火点や燃焼点と関係があるように考えられますが、直接の関係はありません。従って引火点が低いからといって必ずしも発火点が低いとは限りません。むしろ炭化水素の場合、同族体ならば沸点の上昇(つまり引火点の上昇)とともに発火点が低下する傾向を示します。また同一分子量ならば、パラフィン < ナフテン < 芳香族 の順に発火点が高くなります。

上記に石油製品の引火点と発火点を示しますが、石油製品の場合、軽質油の引火点は重質油のそれに比べて著しく低いが、発火点は逆に高いのが普通です。これは重質油の方が軽質油に比べて活性化されやすいために酸化、分解を起こしやすいといわれています。しかし、この両者の差異は活性化のされやすさの他にも熱伝導度や他の因子によっても影響をうけると考えられています。

 
 

 
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